発酵gypsy ~発酵を通じて3rd placeを築く~

”発酵を通じて3rd placeを築く

皆さんは普段、どのような食生活を送っていますか?

外食のような手軽に食事ができる仕組みが増えたことで、私たちは純粋に食を味わう時間が減ってきているように思えます。日本は、世界的に食文化が注目されている国のひとつ。中でも古くから受け継がれている食べ物が「発酵食品」です。

今回取材させていただいたのは、発酵を通じて繋がりを創る活動をする「まきよ」さんです!

 

 

私は、発酵を通じて人の居場所を創る活動をしています。
育った環境、信仰、国籍、ジェンダーなどの違いは一旦横に置いて、その人がありのままで居られる場所をつくりたい、そんな想いで活動をしています。

「発酵を通じて」という部分を詳しくお聞きしたいです。

 

私は中学時代のあだ名が “ゲリ子” でした(笑)
そのくらい胃腸が弱くて、苦手な先生の授業前はいつもトイレに駆け込んでいました。大学になってもその身体は変わらずで、成人式の出来事は今でも良く覚えています。着物をきている最中に立ってられないくらいの鈍痛がきて、気がついたら救護室のベッドの上。

「これでは、仕事を始めたとき絶対迷惑がかかるな」と感じていました。

 

身体的な苦労があったんですね。

この身体の状態もあってか、親には自分のやりたいようにはさせてもらえませんでした。今思えばそれが愛情表現の一つだったんだと思えるんですが、当時の私はどんどん自信が無くなっていきました。

高校卒業後に上京してからは大叔母と住んでいました。
大叔母は、当時70代にも関わらずわりと自由な人で、それが当時の私にとって精神的支えになっていました。大叔母と当時の彼には本当に助けられて、感謝の思いでいっぱいです。

私の理想は、バリバリ運動が出来て、タフで、肌も焦げてる健康的な女性なんですが(笑)理想に身体がついていかない。やりたいことがあるのに、身体がもたない。それをずっともどかしく感じていました。

発酵に対する想いは、当時の理想と現実のギャップからくる劣等感や痛み、家族の健康状態も含めて身体が資本であるということを痛感していたからかもしれません。

 

そこから、社会人になってどう変化していったのでしょうか?

私の転機のひとつは、リクルートでのキャリア経験です。このキャリアを通じて気づいたことは、「私はカスタマーと直接接点を持つことがモチベーションに繋がる」ということ。 

自分の仕事が誰を幸せにしていて、どこに繋がっているか。先の先までイメージすることがなかなかできないので、「会って温度感を味わうこと」が、私にとってはパフォーマンスを最大化することに繋がるんだと学びました。

そんなとき、菜月さんという方の取材記事を目にしました。
菜月さんは発酵活動家として仕事をされている方で、そのとき記事に書かれていた発酵林檎ソーダを「簡単そうだし、ちょっと作ってみるか。」と思ったのが、私と発酵の最初の出会いです。 

 

発酵との出会い

仕事終わりに疲れて帰ってきて、早速漬けていた発酵林檎ソーダの瓶を開けてみました。

「ポンッ シュワシュワ~ 」

 と音を鳴らして、ぷくぷくと泡が溢れたと共に、身体が微生物に纏われるような幸せな空間に包み込まれました。
それが、生命というか、訪れたこともない未知の宇宙を感じるような感覚で、林檎酵母に出会った感動を今でも覚えています。

それから、発酵している状態を眺めるようになりました。私にとってはそれが水槽の魚を見るような感覚で、生命活動をする姿に愛おしさを感じるようになったんです。

また、漬けたリンゴを「発酵リンゴソーダ」として大切な人にあげてみると「おいしい!」って喜んでもらえたことがとても嬉しくて、どんどんハマっていきました。

 

発酵の魅力を少しずつ感じるようになった私は、きっかけである菜月さんのワークショップに参加しました。
ワークショップでは「キャベツのザワークラフト」を作ったのですが、全くの素人だった私は、キャベツの大きさも形もどう切って良いかわからず、戸惑っていました。同じように戸惑っている参加者もいたと思います。そんな私たちを見て、菜月さんは
「ビンを開けたとき、どんな形だったら嬉しいか、想像しながら切ってみて。」と優しく声をかけてくれました。
それが、私には衝撃でした。
料理教室は「決まった分量、レシピがあって、先生の言う通りに作っていく」イメージだった私にとって、作り手を尊重した菜月さんのワークショップには愛に満ち溢れていて、ファンになってしまいました!

人に人が集まっている感覚。

「私もこうでありたい」と漠然と感じました。

 

そこから、自分でもワークショップをしていこうと?

最初は仕事にするつもりはありませんでした。
ディズニーランドが好きなことと、ディズニーランドで働きたいと思うことは違うじゃないですか。私にとって、発酵はただただ楽しみでありたかった。
そのときはそう思っていました。

 

好きなことを仕事にしたい、とすぐに思えた訳ではなかったんですね。

はい。そこから、ただのファンではなく、発信者として生きようと思った理由はいくつかあります。

ひとつは、姪の存在です。
当時、4歳になる姪と実家で糠床を仕込む機会がありました。
そうすることで、大きくなったとき「この糠床、4歳の時に作ったものなんだよ」と、数年数十年も前のものを五感で思い出し、次の世代へ繋いでいくことができます。

また、それまでの私にとって、実家に帰るのにはエネルギーがいることでした。覚悟して帰る、というか、なんとなく緊張するというか。そんな家族をプラスの自分で巻き込みたかった、という理由もあります。

 

家族の影響が大きかったと。

はい。また、尊敬している方に「まきよちゃん、ただ発酵が好きで没頭している人になっているよ」と言われました。以前小倉ヒラクさんという方の講演会に言ったとき、微生物を眺めながら一人で笑っている人がいて、「こうはなりたくないなぁ」って思っていました。そして私もそうなっていることに気がつきました。
その時知ったことは、「想いは伝えてこそはじめて意味が生まれる」ということです。

 

ただ、当時の私は、伝えることに恐怖がありました。自己肯定感が低いせいか、何をするにも「私なんかでいいんだろうか?」がつきまとってしまう。

また、発酵は特別なスキルがいるものではありません。誰でもできる簡単なこと。
だからこそ、「自分の大切なものが、私だけのものじゃなくなったらどうしよう。」
という不安がありました。その考えが、糠床作りのワークショップにチャレンジしてみて大きく変わりました。

 
糠床は、おすそ分けが大事なんです。菌を混ぜることが大事。そのために、自分の作った糠床を参加者に少しおすそ分けをする。そうすると、私の糠床が、その人の中で生きつづけるんです。
よくよく考えたら、それってステキなことじゃないですか?
自分が伝えたものが、その人の中で生きつづける。

「こうやって、伝えたものが繋がっていくことが大事なんだ!
そう考えられるようになってから、どんどん発信していこうって思えるようになりました。

最近、人を見ると「発酵してるなぁ」て感じることがあります。物理的な発酵ではなく、内面的な発酵という意味で。

 

内面的な発酵?

そう。穏やかな心というか、心の動きに素直に生きている人

菜月さんと話をしている時に「まきよ、まきよはそのままでいい。狂っていこう。狂っていればおのずと人はついてくる。」と言っていただいたことがあります。私には「この人がいたから今の自分がある」と思える人がたくさんいます。私も、自分に素直に生きたい。そして、そんな自分の生き方に人が集まったら、これほど幸せなことはないです。

 

では、そんなまきよさんのビジョンを教えてください。

「出逢った方がそのまんまでいられる場をつくること」です。
そう思うようになったのは、大学時にマルタでの経験した出来事が大きいです。マルタは、アフリカ大陸とヨーロッパの間にある小さな島国です。
色んな文化や価値観が入り混じったところで、日本人としてわりと中立的な立場で本当に色んな人と接点をもつことができました。例えば、体は女性だけど、心は男性の人とか。
「あ、本当にいるんだ。」
今までの人生では出会うことのなかった人たち。
ただ、そういう人たちが、本当の自分を隠して生きている姿を見て、私は「もっとその人がそのまんまでいられる様な世の中だったら良いのに」と思うようになりました。

育ってきた環境や、宗教の違いや、性別の違いとかを一旦横に置いて。

“みんなで味噌でも仕込もうや!”って言える、発酵を通した平和な場をつくりたいです。創り手を通して、食物のルーツを知り、あなたの育ってきたルーツを知り、”ありがとう”が生まれるきっかけ作りの場で、ありのままでいられる場をつくる。それが私のビジョンです。

 


取材を終えて
人への愛情、そして食べものに対しても愛情溢れるまきよさん。その心の在り方が、発酵という伝統ある食材へ導いたのではないか、と取材を通じて感じました。現在、新たなチャレンジをしているというまきよさん。今後のご活躍も期待しています。


 

ホームページ
https://peraichi.com/landing_pages/view/hacco
参考文献
https://discoverjapan-web.com/article/17565
https://dot.asahi.com/aera/2016071500260.html?page=2


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青空の向こう / アレックス・シアラー

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