【人の幸福は長続きしない!?】ヘドニックトレッドミル現象(快楽順応)から分かる快楽の仕組み

心理・脳科学

 

今日は「ヘドニックトレッドミル現象」について勉強していくで!

ヘドニック。ハリーポッターに出てくるフクロウですか?

ヘドウィグやがな、それ。
ヘドニックは「快楽」、トレッドミルは「ランニングマシン」。
直訳すると「快楽のランニングマシン」という意味の、心理学用語や。

ヘドニックトレッドミル現象
一度感じた幸福感は、時間とともに薄れていくという現象。

宝くじ当選者への心理学実験

アメリカで行われた「宝くじの高額当選者の幸福度の変化」に関する調査で、宝くじに当たった直後は「以前より幸福になった」と全員が回答しましたが、1年後同じアンケートを行ったところ、ほとんどの人が「以前と変わらない」と回答したそうです。

宝くじに当たればその後の人生がより楽しくなりそうなものですが、実際はそうでもないことが心理学実験によって提唱されています。そして、その理由こそ「快楽の慣れ」によるものだと唱えたのが心理学者「Michael Eysenck」です。

僕はすぐ飽きちゃうんですが、それもこのせいか。

「飽き」も、慣れからくるものやから、大きく括ると同じ性質といえるかもしれんな。

具体例

例を挙げると、以下のようなものも「ヘドニックトレッドミル現象」であると考えられます。

  • 新しい車に買い替えるときの1回目と10回目
  • 好きな食べ物を毎日食べたときの1日目と10日目

一時的な幸福の増減は様々な場面で経験されますが、時間とともにニュートラルなレベルに戻っていきます。そのため、新しい車に買い替えた直後は著しい幸福の増加を感じることはできますが、暫くすると幸福感は買い替える前と同じになります。通常状態の幸福レベルが上昇するのではなく、一時的な上昇であるため、薬物による一時的な快楽と仕組み上は同じということです。

同じような心理学用語に「順化」というものがあります。

 

馴化
ある刺激がくり返し提示されることによって、その刺激に対する反応が徐徐に見られなくなっていく現象。
 
 

例:
パチンコ屋に入って、最初はうるさいと感じていたが、暫くするとうるさいと感じなくなる。


身体的刺激に対し、反応する必要が無いことを学習したために反応が低下していきます。
パチンコの例で言えば、最初は「大きな音=危険」と思っていたものが、危険ではないと学習されたことにより驚かなくなったと考えられます。

 

なんで人って慣れるんですか?
ずっと芋ようかん食べながら「うめ~」って言ってる方が幸せだと思います。

「慣れ」による幸福度の減少が起きる理由は、「生存競争」に勝ち残るために必要だったから、らしいで。

脳に備わるリスク分散の機能

私たち人間が生存競争に勝ち残った大きな武器。それが「脳」です。

私たちは、他の生物と違って大脳が大きく発達しています。私たちの脳には、新しいことを学び、それを応用できる力があります。たくさんのことを学ぶことは生存戦略の選択肢を増やすことに繋がります。
つまり、新しいことを学ぶために「飽き」は必要な仕組みであるということです。

 

また、人間は「雑食」に分類される非常にめずらしい生き物です。生存競争の末に雑食へと進化していったと言われていますが、同じ物を食べ続けると飽きてしまうことは、人間の複雑な人体構造の維持と、生存のためなのかもしれません。

人間の身体は、なにかしらの意味があるから備わっている機能ばかりやねん。
「これ、なんのためにあんねん!」と思ったら、まずは調べてみることが大切やね。

わかりました!
「これ、なんのためにあんねん!」って思ったら、自分で調べてみます。

おい、今関西弁バカにしたやろ。

お金で幸せは買えない

人には様々な身体機能が備わっています。それらは本来、進化の過程で身につけていった「生きるために必要な機能」です。

「幸福」は、何度同じ刺激を与えても同じように感じることができた方が幸せのように思ってしまいますが、複雑な環境、身体の作りをした我々は、快楽による急激な幸福感の上昇には感じづらくなる方が都合が良いのかもしれません。

ヘドニックトレッドミル現象は、「お金で幸せは買えない」ということを証明しているような現象です。そのため、「資本主義」がもたらす消費欲求とは違った、別の形で得られる幸福を私たちは見つける必要があるのかも知れません。